肥満症は目にも悪い?−糖尿病・高血圧・睡眠時無呼吸症候群と眼底の関係−
「肥満症は、目にも悪い」
そう聞くと、少し意外に感じるかもしれません。
ただし、体重が多いこと自体を問題にしているわけではありません。
日本ではBMI25以上が肥満の目安とされていますが、BMIはあくまで一つの指標です。筋肉量が多いためにBMIが高い方もいますし、反対にBMIが高くなくても、内臓脂肪や血圧、血糖、睡眠に問題が隠れていることがあります。
大切なのは、体型ではなく、健康障害が起きているかどうかです。
「肥満」と「肥満症」は違います
肥満とは、体脂肪が過剰に蓄積した状態です。
そのうえで、糖尿病、高血圧、脂質異常症、睡眠時無呼吸症候群など、肥満に関連する健康障害を伴い、医学的な治療が必要と判断される状態を「肥満症」と呼びます。
肥満症治療の目的は、単に体重を減らして見た目を変えることではありません。
血圧や血糖、睡眠などを改善し、将来の心筋梗塞、脳卒中、そのほかの合併症を減らすことにあります。
また、肥満症を「意志の弱さ」や「自己管理の不足」と決めつけることも適切ではありません。
重要なのは、細いか太いかではなく、体にどのような健康上の影響が出ているかです。
糖尿病は、気づかないうちに網膜を傷めます
糖尿病で高血糖の状態が続くと、網膜の細い血管が障害され、糖尿病網膜症を発症することがあります。
初期には自覚症状がほとんどありません。
進行すると、網膜出血、黄斑浮腫、硝子体出血、網膜剝離などを起こし、硝子体注射、レーザー治療、手術が必要になることもあります。
糖尿病と診断された方は、見え方に問題がなくても、定期的な眼底検査が必要です。
高血圧は、眼底の血管にも現れます
高血圧は、心臓や脳だけでなく、網膜の細い血管にも負担をかけます。
眼底検査では、網膜動脈の狭窄や硬化、眼底出血など、高血圧による変化が見つかることがあります。
また、高血圧や動脈硬化は、網膜静脈閉塞症にも関係します。
網膜静脈閉塞症では、網膜の静脈が詰まり、眼底出血や黄斑浮腫を起こします。突然見えにくくなったり、視野の一部がかすんだりすることがあります。
睡眠時無呼吸症候群も目に関係します
睡眠時無呼吸症候群では、眠っている間に呼吸が繰り返し止まり、血液中の酸素濃度が低下します。
高血圧、糖尿病、不整脈、心筋梗塞、脳卒中などに関係するだけでなく、眼科領域でも、
- 緑内障
- 網膜静脈閉塞症
- 糖尿病網膜症
- 加齢黄斑変性
などとの関連が報告されています。
睡眠時無呼吸症候群は、本人に自覚がないことも少なくありません。
大きないびき、日中の眠気、治療しても下がりにくい高血圧などが手掛かりになります。
当院では、眼底所見や問診から睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合、睡眠医療を専門とする医療機関へ紹介しています。
睡眠時無呼吸症候群の確定診断と治療は、連携先の医療機関で行います。
このような方は眼底検査をご検討ください
次のいずれかに当てはまる方は、自覚症状がなくても眼底検査をおすすめします。
- 糖尿病と診断されている
- 高血圧や脂質異常症がある
- 睡眠時無呼吸症候群を指摘されている
- 大きないびきや日中の強い眠気がある
- 眼底出血や網膜静脈閉塞症を指摘されたことがある
- 急に見えにくくなった
- 視野の一部がかすむ、欠ける
- 黒いものが急に増えて見える
特に、急な視力低下、視野の欠け、飛蚊症の急増がある場合は、早めに眼科を受診してください。
目から全身の病気が見つかることがあります
眼底は、全身の血管を直接観察できる数少ない場所です。
眼底に現れた変化をきっかけに、糖尿病、高血圧、睡眠時無呼吸症候群など、まだ診断されていない全身疾患が疑われることがあります。
いわみ眼科では、目の病気だけでなく、その背景にある全身状態も考えながら診療しています。
肥満と肥満症の違い、BMIだけで健康を判断できない理由、肥満に対する偏見の問題については、noteで詳しく解説しています。
▶「肥満症は、目にも悪い。―眼科医が伝えたい、体重ではなく『健康障害』の話―」
私は眼科医ですが、目だけを診ているつもりはありません。
眼底に現れた小さなサインから、まだ見つかっていない病気を疑い、必要な医療へつなぐ。
目から全身を診ることも、眼科の大切な役割です。
