Treatment
眼の病気と治療
眼の病気と治療について
流行性角結膜炎(はやり目)
流行性角結膜炎は、「はやり目」とも呼ばれることからわかるように感染性が非常に高い疾患です。空気感染はしませんが、感染した目に触れた手でものを扱い、その物体を扱った人が手で目をこするといった流れで感染します。また、タオルなどでも感染するので家庭や職場でも注意が必要です。学校保健法で指定されている伝染病なので、お子様が発症した場合、感染リスクが下がるまでは休んでも欠席扱いされませんから、必ず休んでください。職場であっても周囲への影響を考えると休むことを推奨します(御要望があれば診断書を作成します)。
症状としては充血や目やにのほか、重い場合角膜の損傷や角膜混濁、まぶたの裏面に偽膜(白い膜)ができることなどが知られています。
治療について
流行性角結膜炎(はやり目)はウイルス感染で起こるので、ウイルスによる炎症を抑えるステロイド点眼薬を処方します(状態が悪い場合内服薬も検討)。また、ほかの菌による害を防ぐための抗菌点眼薬もあわせて出します。
多くの場合、発症から7~14日で治癒するケースが多いですが、疾患として重い場合や身体の状態が悪い場合、1ヶ月にも及ぶこともあるので、静養して体調を整えることも重要です。
細菌性結膜炎
細菌性結膜炎は、軽度であれば目やにやかゆみ、充血や涙目などの症状が出ますが、網膜炎や角膜炎などの合併症を伴うケースも見られます。
この疾患は名称の通り細菌感染に起因する疾患で、原因菌としてはカンピロバクター菌やストレプトコッカス菌、クラミジア菌やモラクセラ菌、ヘモフィルス菌やスタッフィロコッカス菌などが結膜に感染して発症します。風邪を引いた際にもなることが多いです。空気感染はしませんが、経路としては接触感染や垂直感染(親から子への感染)、性交渉による感染が考えられます。
治療について
細菌性結膜炎は時間の経過とともに治癒することも多い疾患ですが、症状を緩和するために原因菌に効果を示す点眼薬などを処方します。また、合併症も起こりうる疾患なので、その予防のために抗生物質を処方することもあります。
霧粒腫(さんりゅうしゅ)
まぶたの中にある瞼板という軟骨の中に、マイボーム腺という脂(あぶら)を作る部分があり、そこに感染が生じて炎症を起こします。通称ものもらい、あるいはめばちこと呼ばれ、瞼の中にしこりを触れ、圧痛を伴います。感染が落ち着くと痛みが消えますが、しこりが長く残ることがあります。
治療について
霰粒腫の急性期(感染に勢いがある時)には抗生剤と炎症止め(ステロイド点眼)を処方します。圧痛がなくなれば感染は沈静化していますので、様子見になります。しこりが長く残る場合は半年ほど経過観察し、それでも問題になるようであれば手術的に取り除く場合があります。
大人の斜視
大人の斜視は、先天的に存在した要因が大人になってからあらわれる場合と、成長後に発生した要因で起きる後天性のものに大別されます。先天性の場合、子どものころから先天性上斜筋麻痺や間欠性外斜視があっても両眼視ができていた人が、徐々に両眼視ができなくなり、大人になったころに症状が顕著になるパターンが考えられます。一方で後天性の場合、甲状腺眼症や重症筋無力症のほか、脳動脈瘤や脳腫瘍、脳出血や脳梗塞、脳神経麻痺などの脳疾患との関連がある場合があります。近年、加齢に伴って目の周りの眼球運動を支えるプーリーと呼ばれる腱の機能が衰える加齢性斜視も注目されています。そのため、まず検査によって原因を追究し、斜視への対応と原因となった疾患の両方に治療を行うことが重要です。先天性でも後天性でも、子どもの時には両眼視ができていたことから、ひとつのものが複数に見える複視は自覚しやすいので、気になる症状があればぜひ早めに当院にご相談ください。
治療について
斜視の原因が疾患である場合、まずはその疾患の治療を優先します。疾患の治療をしても斜視が残ることはあり得ますが、その場合はプリズム眼鏡(目の位置ズレを補正する機能をもつ眼鏡)による補正を検討します。ただし、プリズム眼鏡は正面を見るときのみしか補正効果がありませんし、症状によっては補正が困難なケースもあります。その際は遮閉レンズ(曇りガラスのようなレンズ)を片側に使って意図的に視力を下げ、斜視を緩和することもあります。
老眼
35歳頃からピント調節を司る水晶体が少しずつ固くなり、老眼が始まります。手元が見にくくなったり、手元をみすぎると遠くが見にくくなったりします。遠視の方は比較的早くに手元が見にくいことを自覚しますが、近視の人は眼鏡を外すなどのことで手元が見えることが多いため自覚は緩やかです。しかし近視の方も度数の強い眼鏡やコンタクトレンズを使っていると同様の症状がデます。一般的に55歳頃に症状が完成するとされます。
治療について
加齢による老眼の回復や予防はできませんが、対処によっては日常生活への支障を少なくすることはできます。そのため、老眼の症状に気付いた場合、ぜひ当院にお越しください。早めに対処すれば、目や身体の不調を抑えやすく、進行を緩やかにできます。遠近両用眼鏡は眼の位置合わせが非常に重要で、きちんとした処方と良い眼鏡店での作成が大切です。当院で眼鏡を処方する際にご説明させていただきます。
- 遠近両用の眼鏡・コンタクトレンズの使用
- 眼のストレッチ
- 疲れ目を緩和する点眼薬の使用 など
各種レーザー治療
YAGレーザー(後発白内障手術)

当院ではYAGレーザーを使った後発白内障手術を行っています。YAGレーザーで眼内レンズの裏側にある水晶体後嚢に穴をあけると、水晶体嚢(眼内レンズが入っている膜)のにごりを解消可能です。後発白内障は軽度であれば治療を必要としませんが、水晶体嚢の細胞が増えてにごりが激しくなると視力の低下やかすみ具合が激しくなるので、そのようなときにYAGレーザーによる治療が有効です。
緑内障レーザー(SLT)

SLT(選択的レーザー線維柱帯形成術)とは、線維柱帯(目の内部にある液体を排出する通路)にレーザーを照射し、繊維注帯内で目詰まりを起こしている細胞のカスなどを除去して眼圧を下げることで、緑内障を治療する方法です。
緑内障の主要因は房水の出口にある繊維注帯の詰まりによる眼圧上昇とされているので、SLTは有効な治療方法です。SLTによるレーザー照射は非常に局所的なので、繊維注帯自体にダメージを与えることはありません。そのためSLT治療後に再度眼圧が上がって緑内障の症状が出ても、再度SLTによる治療を実施できます。
過去にはアルゴンレーザーを使ったALTという治療がありましたが、繊維注帯へのダメージがあるうえに効果期間も短かったので、近年はSLTに置き換わっています。
網膜レーザー(網膜光凝固術)

網膜レーザー(網膜光凝固術)は、眼底の疾患に対して、特定波長のレーザーを網膜に照射する治療です。中心性漿液性脈絡網膜症や網膜静脈閉塞症、網膜裂孔や糖尿病網膜症などに有効で、網膜を凝固させて疾患の悪化を防止します。この治療によって疾患の治癒はできませんが、治療を行う時点より状態を進行させないことにも大きな意味があります。
光線力学療法

加齢黄斑変性がある方に対して、まずビズダイン(ベルテポルフィン)を注射した後、レーザーを網膜のダメージを受けた部分に照射する治療です。ビズダイン(ベルテポルフィン)は腕に注射しても目の新生血管(視力の低下を起こす血管)に集まる傾向があり、レーザー照射によって活性酸素を出します。活性酸素は細胞を傷つけますが、光線力学療法においては目に悪影響をおよぼす新生血管に効果を及ぼしつつ、正常な部位へのダメージを最小限にするように配慮されています。
比較的新しい治療法ですが、2004年に保険適用されているため、すでに20年以上の実績があります。