Vitreus
硝子体手術・注射

硝子体手術
硝子体(しょうしたい)は目の内部にあるゼリー状の物体です。健康な状態なら透明で張りがありますが、加齢や疾患の影響で濁ることがあります。また、網膜を引っ張って穴があく黄斑円孔や網膜裂孔を起こすこともあり、そこから網膜剥離に至る例も見られます。さらに、ぶどう膜炎などの炎症で濁りが生じることや、網膜血管閉塞症や糖尿病の影響で硝子体内に出血が起こる場合もあります。
上記のような問題に対しては硝子体手術を行って、出血や濁りの除去、網膜表面に張り付いた膜の除去、剥がれた網膜の修復などを行います。
硝子体手術の対象となる疾患
- 網膜剥離
- 硝子体出血
- 糖尿病網膜症
- 黄斑上膜
- 黄斑円孔
- 網膜静脈分枝閉塞症
- 網膜中心静脈閉塞症
- 感染性眼内炎
- 水晶体核落下 など
手術について
局所麻酔を行ってから手術を実施します。手術に要する時間は多くの場合、30分から1時間程度ですが、症状や疾患の進行度によっては2時間以上を要することもあります。また、硝子体手術を行うと白内障が進行しやすいので、50歳以上の方に対しては硝子体手術と同時に白内障の手術も行うのが一般的です。
麻酔をかけた後、下記の手順にて手術を行っていきます。
-
01
白目に小さな穴(0.5mm)をあける
以下の目的をもつ3ヶ所の穴を開けます。
- 眼内灌流液を注入して眼球内の圧力を保ち、手術が終わるまで形状を維持するための穴
- 手術に必要な明るさを保つために照明を入れる穴
- 硝子体を切るためのカッターのほか、レーザーやピンセットなどを入れるための穴
-
02
濁った硝子体を切除・膜を取り除く
カッターを使って硝子体の一部を切除し、濁った硝子体を吸い出します(硝子体を吸い出した分は眼内灌流液を入れて形状や内圧を補います)。疾患によっては、邪魔な網膜上の黄斑前膜や増殖膜などを除去したり、網膜にレーザーを照射したりする場合もあります。
-
03
網膜剥離、黄斑円孔などでは灌流液をガスに換えて手術を終了
網膜剥離では、剥がれた網膜を目の壁にくっつけたり、網膜の外側にたまった液体を吸い取るために、また黄斑円孔などでは、黄斑の穴を閉じさせる為に、眼の中にガスを入れます。目の中にガスを入れた患者様は、手術後数日間うつむき(顔を下にむける)姿勢が必要になることがあります(病気の程度や部分により、うつむきではない場合もあります。)。また目の中にガスがある間は、ものがよくみえませんが、しばらするとガスが液体に置き換わるのでみえるようになることが多いです。
硝子体注射
目に害を及ぼす新生血管の生成や、出血・炎症を抑えるために、眼球内に抗VEGF薬という薬液を、注射によって硝子体内に投与するための治療です。VEGFとは「血管内皮増殖因子」の略語で、目の機能に支障を及ぼす存在です。
「目に注射をする」という行為は通常行うことがないので、この治療に恐怖感をもつ方は少なくありません。しかし、注射を行う前に麻酔の効果をもつ目薬を使って感覚を麻痺させますので、痛みの心配はありません。
VEGFとは
VEGFとはVascular Endothelial Growth
Factorの略語で、日本語では血管内皮増殖因子と呼ばれます。
VEGFは、新生血管(疾患に起因して発生する異常な血管)を安定させる効果をもっていますが、新生血管自体はもろいので出血やむくみを起こしやすく、視力低下や失明を起こす原因となります。
抗VEGF薬は、名称の通りVEGFの発生を抑えるので、結果として新生血管の生成をさまたげ、目に起こる炎症や出血を防ぎます。硝子体注射で抗VEGF薬を注入しても、時間の経過とともにVEGFは再発生するので、硝子体注射は定期的に行う必要があります。
現在日本で認定されている抗VEGF薬としては、ベオビュやアイリーア、ラニビズマブBSやファリシマブのほか、ルセンティスなどがあります。
硝子体注射の対象となる疾患
- 加齢黄斑変性症
- 糖尿病網膜症に伴う黄斑浮腫
- 網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫
- 強度近視による脈絡膜新生血管 など
注射について
-
01
点滴麻酔
麻酔効果をもつ目薬を投与します(この工程にも痛みはありません)。
-
02
目を開いた状態で固定
目の周辺や内部を消毒し、器具を使って目を開けた状態を維持します。
-
03
注射
黒目から数ミリ離れた白目部分に注射して、抗VEGF薬を投与します。事前に麻酔効果をもつ点眼薬を使っていますし、非常に細い注射針を使うので、ほとんど痛みは感じません。
治療スケジュールについて
硝子体注射は、疾患の種類や症状によって適切にスケジュールを組む必要があります。たとえば、加齢黄斑変性への治療初期には月に1回の注射を3~4回行います。この段階で硝子体注射が不要になるケースもありますが、多くの患者様で眼内のVEGF濃度の再上昇がみられるため、複数回の注射が必要になる場合があります。そのため、導入時の硝子体注射を行った後も定期的に状態を確認し、必要に応じて数ヶ月に1回注射を行います。
硝子体注射後の注意事項
- 注射当日は洗顔や洗髪を避けていただきますが、翌日からは制限はありません。
- 注射をした日から3日程度は、目の周辺に行う化粧(マスカラ、アイシャドウ、アイラインなど)は控えてください。
- 注射当日はアルコールの摂取を控えてください。
- デスクワークなどは注射翌日から可能ですが、力仕事は注射をした日から3日程度控えてください。
- ハードな運動も注射をした日から3日程度は控えてください。