当院のオルソケラトロジー治療について― 裸眼で見える毎日と、近視進行管理を両立するために ―
こんにちは。院長です。
学校健診の季節ですね。
近視児童は年々増えており、やはり今年も引っかかるお子様が多いのではないでしょうか。
一度、オルソケラトロジーについてきちんと紹介したいと考えており、まとめましたのでご覧ください。
オルソケラトロジーとは
オルソケラトロジーは、寝ている間に専用のハードコンタクトレンズを装用し、角膜の形をやさしく整えることで、日中を裸眼で過ごしやすくする近視治療です。
近視の目では、遠くから入ってきた光が網膜の手前でピントを結ぶため、遠くがぼやけて見えます。オルソケラトロジーでは、角膜の中央部分のカーブを少し平らに整えることで、遠くにピントが合いやすい状態を作ります。
また、オルソケラトロジーは、単に日中の視力を改善するだけの治療ではありません。目に入る光のバランスを変えることで、近視の進行に関わる刺激を調整し、眼軸長の伸びを抑える効果も期待されています。
眼軸長とは、目の奥行きの長さです。この奥行きが長くなることは、つまり目の変形と同じ意味になります。小児の近視では、この眼軸長が伸びることで近視が進むことが多いため、視力だけでなく眼軸長を管理することが重要です。
小児近視治療としてのメリット
オルソケラトロジーの大きなメリットは、日中を裸眼で過ごしやすくなることです。学校生活、スポーツ、外遊びなどで眼鏡を気にせず過ごせるため、お子さまの生活の質を高めやすい治療です。
また、保護者が治療に関わりやすいことも大きな特徴です。寝る前に保護者がレンズを装着し、朝に保護者が外すことができます。
多焦点ソフトコンタクトレンズは、日中にお子さま自身がレンズを管理する必要があります。一方、眼鏡は学校で外してしまったり、フレームを歪ませてしまったりすることもあります。
その点、オルソケラトロジーは家庭で管理しやすく、特に低学年のお子さまでも取り組みやすい近視治療の一つです。
当院の特徴① SEED社のオルソケラトロジーレンズを採用
当院では、SEED社のオルソケラトロジーレンズを使用しています。
このレンズには「ブレスオー」という素材が使われています。ハードコンタクトレンズでありながら装用感に優れており、「やわらかハード」とも呼ばれる、比較的つけ心地のよいレンズです。
ハードレンズと聞くと、お子さまも保護者の方も不安に感じられることがあります。しかし、ブレスオー素材のレンズは、ハードレンズの中では慣れやすい部類に入ります。
さらに、乱視があるお子さまに対応したレンズや、近視の度数が強めのお子さまに対応できるレンズもあります。お子さまの目の状態に合わせて、できるだけ適切なレンズを選択します。
当院の特徴② すべてのベースカーブのテストレンズを院内に用意
オルソケラトロジーでは、実際にテストレンズを装用し、目に合っているかを確認したうえで処方を決定します。
このとき重要になるのが、レンズの「ベースカーブ」です。ベースカーブとは、レンズの内側のカーブのことで、角膜の形に合うかどうかを左右する大切な要素です。
医院によっては、院内に置いているテストレンズのベースカーブの種類が限られている場合があります。その場合、実際には処方できる可能性があっても、十分にフィッティングを確認できず、「オルソケラトロジーは難しい」と判断されることがあります。
当院では、製造されているすべてのベースカーブのテストレンズを院内に用意し、診療にあたっています。角膜の形に合わせて、より細かくレンズを選択できる体制を整えています。
そのため、他院で「オルソケラトロジーは難しい」「適応がない」と言われたお子さまでも、当院で詳しく確認すると処方可能な場合があります。
一方で、ごくまれに、必要となるベースカーブがメーカーの製造範囲を超えるお子さまもいらっしゃいます。その場合は、無理に処方することはせず、角膜の形、近視や乱視の程度、安全性を総合的に判断します。
また、オルソケラトロジーが難しい場合でも、近視治療そのものを諦める必要はありません。当院では、多焦点ソフトコンタクトレンズ、近視管理眼鏡、リジュセアミニ点眼など、ほかの近視進行抑制治療もご提案できます。
オルソケラトロジーは有力な治療選択肢の一つですが、すべてのお子さまに最適とは限りません。当院では、まずオルソケラトロジーの可能性を丁寧に確認し、難しい場合には別の方法も含めて、お子さまに合った近視治療を一緒に考えていきます。
当院の特徴③ 初回装用時の不安を減らす工夫
オルソケラトロジーでは、最初のレンズ装着に不安を感じるお子さまが少なくありません。
「目にレンズを入れるのが怖い」
「痛そう」
「自分にできるか不安」
このような気持ちは自然なものです。
当院では、初めてレンズをつける際に、必要に応じて点眼麻酔を使用します。まずは「怖い」という気持ちをできるだけ減らし、レンズに慣れてもらうことを大切にしています。
一度レンズに慣れると、日中の遠方視力が大きく改善し、「よく見える」とお子さま自身が実感できることが多くあります。この実感が、治療を続けるモチベーションにつながります。
当院の特徴④ CASIAによる精密なフィッティング評価
当院では、オルソケラトロジーのフィッティングを非常に細かく確認しています。
使用しているのは、CASIAという前眼部OCTです。これは、角膜を含む目の前方部分を断面で詳しく観察できる検査機器です。
オルソケラトロジーは、角膜の表面にある「角膜上皮」という薄い層の形を整える治療です。角膜上皮は非常に薄い組織ですが、そのわずかな厚みの変化が視力に影響します。
当院では、角膜のカーブだけでなく、角膜上皮の厚みそのものを測定することができます。視力は数ミクロン単位の変化にも影響されるため、より細かい評価が可能になります。
単に「見えているかどうか」だけでなく、レンズによって角膜がどのように変化しているかを確認しながら、治療を進めています。
当院の特徴⑤ 眼軸長をこまめに測定する近視進行管理
オルソケラトロジーは、日中の裸眼視力を改善するだけでなく、近視の進行を抑える目的でも行います。
そのため当院では、視力だけでなく眼軸長をこまめに測定しています。
眼軸長とは、目の奥行きの長さです。小児の近視では、眼軸長が伸びることで近視が進むことが多くあります。オルソケラトロジーは、この眼軸長の伸びをおよそ3〜6割抑えることが期待される治療です。
ただし、完全に近視の進行を止める治療ではありません。そのため、治療中も眼軸長の変化を確認し、近視がどの程度コントロールできているかを評価します。
当院では、オルソケラトロジーを「裸眼で見えるための治療」としてだけでなく、「将来の強度近視リスクを少しでも下げるための治療」として位置づけています。
当院の特徴⑥ アレルギー性結膜炎への対応
オルソケラトロジーでは、アレルギー性結膜炎の管理も非常に重要です。
目のかゆみや炎症が強いと、レンズが安定しにくくなったり、角膜に負担がかかったりすることがあります。アレルギーが強い場合には、オルソケラトロジーが難しくなることもあります。
当院では、アレルギー性結膜炎の管理を徹底しています。抗ヒスタミン薬から免疫抑制薬まで、状態に応じて薬剤を使い分けます。
また、必要に応じて近隣のアレルギー専門医である小児科とも連携し、目だけでなく全身のアレルギー体質も含めて対応します。
オルソケラトロジーを安全に続けるためには、レンズだけでなく、目の表面の状態を整えることも大切です。
当院の特徴⑦ 感染症を防ぐための3ステップケア
オルソケラトロジーで最も注意すべき合併症の一つが、角膜感染症です。
特に、緑膿菌やアカントアメーバなどによる感染症は、重症化すると視力に大きな影響を残すことがあります。
そのため、当院ではレンズケアの指導を非常に重視しています。
感染症を防ぐためには、以下の3つのケアを組み合わせることが大切です。
- こすり洗い
レンズ表面の汚れを物理的に落とします。 - ポビドンヨードを含む毎日の洗浄
毎日の消毒によって、細菌や微生物の増殖を防ぎます。 - 次亜塩素酸などを用いた定期的な化学洗浄
通常の洗浄だけでは落としきれない汚れや微生物への対策として行います。
オルソケラトロジーの感染症についての調査では、感染症の発生率は1万人年あたり5人と報告されています。
「1万人年あたり5人」とは、1万人が1年間オルソケラトロジーを行った場合に、約5人が感染症を起こすという意味です。これは、1dayタイプのソフトコンタクトレンズ使用時と大きく変わらない水準とされています。
さらに重要なのは、この報告で感染症を起こした方では、3ステップケアのいずれかが不十分であったことです。つまり、正しいケアを継続することが感染症予防に非常に重要です。
当院では、レンズ処方だけでなく、装用方法、外し方、洗浄方法、保管方法まで丁寧に指導しています。現在、当院では350人以上のお子さまがオルソケラトロジーを開始していますが、これまで感染症は発生していません。
安全に治療を続けるためには、医療機関での管理と、ご家庭での正しいケアの両方が大切です。
当院の特徴⑧ 視力が出にくい場合も原因を細かく確認します
オルソケラトロジー中に視力が十分に出ない場合、当院では原因を一つずつ確認します。
単に「レンズが合わない」と判断するのではなく、角膜の変化、近視の進行、ピント調節の状態を分けて考えます。
まず、CASIAによるトポグラフィーを確認します。トポグラフィーとは、角膜表面のカーブの変化を地図のように見る検査です。オルソケラトロジーによって角膜がきちんと変化しているかを確認します。
角膜の変化が弱い場合には、レンズの使い方に原因があることがあります。たとえば、睡眠時間が足りない、装用していない日がある、レンズ装着時に空気が入っている、レンズの位置がずれている、などです。
角膜の変化が十分に出ているのに視力が出にくい場合には、眼軸長を確認します。近視そのものが進行している場合には、角膜の形が整っていても視力が出にくくなることがあります。
角膜の変化にも問題がなく、眼軸長にも大きな変化がない場合には、調節緊張を疑います。
調節緊張とは、近くを見る時間が長いことで、目のピント調節が過剰に働き続けている状態です。スマートフォン、タブレット、読書、勉強などで近くを見る時間が長いお子さまでは、ピントが近くに固定され、遠くが見えにくくなることがあります。
この場合には、姿勢指導、近くを見る時間の調整、遠くを見る習慣づけなどの生活習慣指導を行います。必要に応じて、調節緊張をやわらげる目薬を併用することもあります。
当院が目指す治療目標
当院では、オルソケラトロジーを使用している間は、できる限り裸眼視力1.0を目指しています。
もちろん、目の状態や近視の程度によって個人差はあります。しかし、日中にしっかり見えることは、お子さまの学校生活、運動、遊び、日常生活にとって大きな意味があります。
オルソケラトロジーは、単に眼鏡を外すための治療ではありません。
日中を裸眼で過ごしやすくし、お子さまの生活の質を高めながら、将来の近視進行リスクにも向き合う治療です。
当院では、レンズの選択、テストレンズによる細かな確認、初回装用のサポート、CASIAによる精密な角膜評価、眼軸長測定、アレルギー管理、感染症予防の3ステップケア、生活習慣指導まで含めて、オルソケラトロジー治療を丁寧に行っています。
お子さまにとって無理なく続けられ、保護者の方にも安心して管理していただける治療を目指しています。
