ブログ
Blog

ホームブログ > 歪んで見えると言っても。。。?(網膜前膜について)

歪んで見えると言っても。。。?(網膜前膜について)

未曾有の台風が九州地方を中心に被害をもたらしていますね。
百年に一度〜というフレーズ、数ヶ月前にも聞いたような?の印象です。
もはや地球温暖化により日本を始め世界の気象災害は新たな局面に入ったというべきではないかと感じています。
何事も過剰なぐらいの備えを意識することが重要ですね。
院長の岩見です。
本日は網膜前膜という病気のお話です

ものが歪んで見えたら加齢黄斑変性って本当?

最近テレビや雑誌等で、物が歪んで見えたら加齢黄斑変性かもしれません!?
というようなフレーズでの特集が目に付きます。
しかし、網膜(目の中の、カメラのフィルムに当たる部分)の中心部、黄斑に異常がある病気は全て歪んで見えます。

黄斑疾患の例:
・網膜前膜(黄斑に膜が張る)
・黄斑円孔(黄斑にあながあく)
・黄斑浮腫(黄斑に水が貯まる)
・滲出型加齢黄斑変性(黄斑の奥の脈絡膜から新生血管が生じる)
・萎縮型加齢黄斑変性(黄斑の組織がやせる)
・その他黄斑ジストロフィー等々

ひとくちに黄斑に異常がある、と言ってもいろんな病気があります。
加齢黄斑変性はタチの悪い病気ですが、そこまで頻度は高くありません。
この中で一番多いのは網膜前膜です。
本日は網膜前膜について書きます。

 

網膜前膜の画像診断

目の底のカメラのフィルムに当たる網膜の上に「余分な膜」が発生する病気です。
セロハンのように薄い膜がへばりついて、網膜を引きつらせてシワや腫れを作ります。

眼底写真で左の丸い部分が視神経乳頭で、その右側の部分が黄斑部になります。
真ん中に黄色っぽい「膜」があり、その周りに放射状にシワが寄っているのがわかると思います。
これがひどくなっているとどうなるか、「変視」と呼ばれる症状が発生します。

網膜の断層写真=光干渉断層計で確認すると網膜の上の部分に白い線=膜が確認され、
網膜の表層を中心にシワが出来ているのがわかると思います。


断層写真を並べて、平面で再構成するとこのような画像になります。これをen face画像と言います。
真ん中の白い部分が膜の張っている範囲で、黒いスジがシワの部分です。
どの範囲に影響が出ているかを確認する際はこの画像を用います。
ちなみに院長はen face画像について、過去に日本の眼科に記事を書いています。
(五味教授、その節は機会を頂きありがとうございました)

ちなみに、別の患者さんですが、網膜前膜の眼底写真をうちの新しい機械Miranteで撮影するともっと鮮やかに写ります。

一般的な眼底写真(フラッシュ型)より、Mirante(SLO型)で撮影するほうが明確にわかります。
治療を検討する際はこちらで評価しております。

網膜前膜の治療について

じゃあこのあとどうなるかというと、変視と視力低下が生じます。
現在の流れでいうと、視力が低下する前に変視がひどくなり、その段階で硝子体手術によって膜を取り除くことが推奨されています。

変視は、歪視と不等像視に分けられます。
歪視とは、ものがゆがんで見える症状です。
当院ではMチャートを用いてゆがみの定量(どの程度のゆがみがあるか)を評価します。
硝子体手術でゆがみを完全に取り除くある程度減少させられることが多いです。
不等像視とはものの大きさが変わって見える症状で、網膜前膜ではものが大きく見えることが多いです。
当院ではアニサイコニアテストを用いて不等像視の定量(どの程度の大きさの変動があるか)を評価します。
残念ながら不等像視は硝子体手術であまり改善しないことが多く、少しでも生じてきたら悪化防止目的で早めの手術が望ましいと考えています。

左右の見え方を比べる習慣をつけましょう!

当院で発見される網膜前膜の、特に手術が必要になる方の内訳です。
①健診や人間ドックで指摘
②視力低下の自覚
③変視の自覚
網膜前膜を治療する上でベストのタイミングは変視が少し出てきたときです。
先程書きましたとおり、必ずしも手術で変視が消失するわけではありません。
視力低下は変視がひどくなった先に生じることが多いです。
どんな病気でも、早期発見早期介入が後々の経過を左右します。

健診・人間ドックは積極的に受けていただいたほうがいいですし、
セルフチェックとしてはやはり左右の見え方を比べて確認することが大事です。

年齢が上がると網膜前膜を持っている患者さんは増えます。
しっかり見え方を守り、豊かな人生を送っていただければいいなと思います。