網膜剥離について〜これを機に、検診しませんか?
こんばんは、院長です。
ちょうど寝ようかと思った矢先にミュージシャンの方が網膜剥離を患われたとニュースが飛び込んできたので少し書かせていただきます。
目はカメラみたいな構造をしており、左の方から角膜(黒目)、ひとみ、水晶体(レンズ)、硝子体、網膜(フィルム)の順番で光が通っていきます。
年齢が上がると、硝子体に変化が出てきて縮んできます。
そして硝子体が網膜から離れて前の方にしぼんでいく過程を「後部硝子体剥離」と呼びます。
近視が強い方は40代以降、そうでない方は50代〜70代ぐらいのタイミングで生じます。
ちなみに強度近視の方は、近視のない方に比べて10倍以上網膜剥離を起こしやすいです。
基本的に、誰もが通る道です。
その時、硝子体が網膜からつるっと離れず、網膜を引きちぎってしまうと孔があきます(網膜裂孔)。
さらにそのまま放置して、孔から網膜の下に水が入ると網膜剥離になっていきます。
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このタイミングでは硝子体混濁だったそうです。
いわゆる飛蚊症という症状がありますが、「動くものが見える」ものを指して、蚊が飛んでいる様に見えるとのことでその名前がついています。
硝子体に濁りが出て、それが目に入る光を遮ると、網膜に影が落ち、出てくる症状です。
網膜剥離における硝子体の濁りは、①出血があった場合、②長い間網膜剥離があって目の中に強い変化が出ている場合です。
網膜裂孔は網膜の血管沿いに生じることが多く、穴があく時に硝子体出血を生じることは珍しくありません。
今回はそのようなパターンだったのかな?です。
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網膜裂孔のみの状態であれば、通常網膜光凝固というレーザー治療で治せます。
しかし網膜剥離になってしまうと、年齢的には硝子体手術が必要なことが多いです。
どのような手術をするかと言うと、網膜を引っ張っている硝子体を切除して、網膜の下に溜まっている水を抜いて、ガスを入れて網膜を押さえてくっつける、までを行います。
おそらくオーソドックスな手術をされたと思います。
ガスの吸収速度の目安は概ね1−2週間程度とされております。(ガスの種類によります)
術後経過の中で大切なことの一つに、「ガスが残っている間は飛行機に乗れない」があります。
気圧が下がった環境に行くとガスが膨張します。では飛行機に乗る時に目の中にガスが残っていたら。。大変なことになりますよね。
実は過去にそのような事例が何例か報告されています。
今回は術後11日目なので大丈夫だろうと見込みで動いてしまったんでしょう。
実はガスが消える速度は個人差、状況による差が結構あります。
お仕事へのダメージや、お客さんのがっかり感はもちろんあると思います。
しかし網膜剥離は放置すると失明する病気ですので、しっかり治さなければいけません。
体優先で治療をされてよかったと思います。
網膜裂孔から網膜剥離に至るまで、少しタイムラグがあります。
また、網膜裂孔が生じたタイミングで飛蚊症が生じることが多いです。
飛蚊症は出てから、一旦消えることがあります。
しかし網膜裂孔が生じていた場合、自然治癒することはありません。
40代・50代以降で飛蚊症を感じている方、特に近視が強い方は網膜剥離のリスクが有ります。
写真は網膜剥離の眼底写真です。
左上の赤い所が網膜裂孔で、黄斑近くまで網膜剥離があります。下に方の黒いところは硝子体混濁です。
この方は幸い、網膜剥離が黄斑に及ぶまでに手術ができたため、視機能はそれほど低下せずに落ち着いています。
間に合ってよかったと神様に感謝する案件でした。
日本人は諸外国と比べて眼科健診率が低い国です。
体の不調のサインを見逃さず、検診を受けるようにしてくださいね。