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当院では緑内障診療の第一選択としてレーザー治療を勧めています。

2024.6.28お知らせ

こんばんは、院長です。
以前も取り上げましたが、引き続きウェブの記事を書き続けています。
しばらく前になりますが、緑内障の記事を書きまして、Yahoo!さまにもまだ掲載されています
(そのうち消えると思いますので、こちらが元記事の大人んサーさまのものになります。)

さて、当院では現在緑内障レーザー(SLTレーザー)を強くおすすめしております。
本日は根拠となる論文を紹介していきます。
(注意!)
日本の緑内障診療ガイドラインとは異なる内容になりますので、あくまで個人的な考え方であることをご留意ください。

LiGHT study

2019年に最も権威ある臨床医学雑誌の一つであるLancetに掲載された論文です。
イギリスでの多施設共同研究において、緑内障の治療としてレーザーが良いか、点眼が良いかを比較した論文になります。
緑内障レーザーの成績が非常に良く、緑内障診療の第一選択に成りうるというものでした。
しかしまだエビデンスの蓄積が少ないとして、2022年に更新された日本の緑内障診療ガイドライン(第5版)にはその内容は盛り込まれませんでした。

日本発の緑内障レーザー研究

我が国で緑内障レーザーの第一人者といえば福井済生会病院の新田先生になります。
彼を旗頭に行われた、日本発の緑内障レーザー多施設共同研究の論文が掲載されました。
これによると、緑内障レーザーは第一選択でも、点眼に追加する形でも、正常眼圧緑内障(日本人の緑内障は多くはこれ)に対して有効という結果でした。
現在の日本の緑内障診療ガイドラインではレーザー治療は点眼に追加する形で行うとされていますが、
この結果は今後の緑内障診療におけるレーザー治療の重要度を引き上げる報告になっています。

緑内障治療としては主経路を活性化すべき

ここでいきなり難しい用語になってすみません。
ゆっくり書いていきます。
緑内障治療は、眼圧を下げることを行います。
眼圧は眼の中の水(房水)の流れによって決まります。
水の流れは房水産生(水が出る蛇口に当たる部分)と排水溝(主経路と副経路=メインとサブが存在します)のバランスによって決まります。
現在日本で使われている点眼は主に5系統に分かれます。
その中で、グラナテック(ROCK阻害薬)だけが主経路を活性化させる点眼で、
その他は房水産生抑制または副経路の活性化によって眼圧を下げるものです。

それに関連して、2023年に神戸大学から非常に興味深い論文が出されています。
緑内障の手術として線維柱帯切開術(主経路の排水口の蓋を開ける手術)の術後成績を、
手術前の点眼としてグラナテック処方あり群と処方無し群を比較したものです。
結果はグラナテック処方あり群が優位に良いものでした。
その理由としてこの論文では、グラナテックを処方していない群は房水の流れが主経路を通らないため、
主経路が廃用性萎縮(使わなくなって痩せてしまう)のではないかと考察しています。

現在緑内障に対する手術として低侵襲緑内障手術(MIGS)が多く行われるようになっています。
MIGSの多くはこの線維柱帯に対してアプローチするものであり、
この論文はMIGSを成功させるためにはグラナテック点眼を処方しておいたほうがいいかもしれないという内容です。

緑内障レーザーは主経路を活性化させる

グラナテックは緑内障治療には良い点眼なのですが、強い充血が副作用としてあります。
また、点眼は毎日キッチリ続ける(アドヒアランスと呼びます)ことが大事なのですが、これもなかなか難しいとされています。
緑内障レーザーは線維柱帯にレーザー光線を照射し、グラナテックと同様に主経路を活性化させて眼圧を下げるものです。
これらの論文を総合しますと、

緑内障レーザーは点眼と同様に有効であり、
かつ点眼の副作用とアドヒアランス、長期成績の観点から、
(基本的に)緑内障診療の第一選択にすべきではないだろうか。

と考えるに至りました。
ただしあくまで基本的には、です。
緑内障にはいろいろな病態があり、例えば白内障手術を緑内障の治療として行う場合など、様々な対応があります。
それぞれの患者様の状況に合わせて、また患者様のご希望も確認しながら、最適な診療を行っていきます。
数年以内に日本の緑内障診療ガイドラインが更新されると思いますが、そちらもまた注視しながら診療に当たっていきたいと思います。

当院での緑内障レーザーの統計では、初回治療の90%以上の方に良い眼圧下降が得られております。
緑内障レーザーのもう一つの長所は、効果が得られればそれが切れるまで(初回治療で平均約3年と言われています)は点眼をしなくて良い、メンテナンスフリーになるということです。
もちろん眼圧の確認は必要なため通院はしていただきますが、毎日の点眼のわずらわしさからの開放も大きなメリットではないかと考えています。
当院では概ね1ヶ月に10件程度の緑内障レーザーを行っています。
いつでもご相談に対応させていただきますので、お声掛けください。