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当院で採用している眼内レンズ(LENTISとEyhanceについて)

まだまだ残暑厳しいですね。
皆様体調を崩されておられませんでしょうか。
暑さ疲れ、というものがあります。
9月に入り、今こそ体調にお気をつけください。
本日は白内障手術で挿入される眼内レンズについてお話したいと思います。

眼内レンズの種類について

白内障は水晶体という目の中のレンズが濁る状態で、加齢とともに100%の方が罹患します。
手術は保険上は「水晶体再建術」と呼ばれますが、医学上の呼び方は超音波乳化吸引術+眼内レンズ挿入術、になります。
乳化吸引で「濁りをとって」、眼内レンズで「ピントを合わせる」の2行程を意味します。
眼内レンズは現在①単焦点レンズ、②保険のきく付加機能のあるレンズ、③保険のきかない付加機能のあるレンズ、になります。

①単焦点レンズはほとんどの方に使用されるレンズです。
見え方は大変良いもので、特に使用に問題はありません。
ただ、遠方か近方のいずれかに焦点を合わせると、近くないし遠くを見るときに眼鏡が必要になります。
見え方としては単焦点+眼鏡が最もきれいな見え方です。
③保険のきかない付加機能のあるレンズは眼鏡を使わないことを目標に開発されているレンズであり、同心円状に刻みが入っています(回折型)。
遠方と近方のいずれも眼鏡が無しで見えることを目的としています。
しかし、刻みの部分で光が減衰するため、コントラスト感度(色や明るさの違いを感じる力)が減少します。
また、刻みの部分で光が回折するため、夜間などの暗い場所で光が滲むハロー・グレアが必ず生じます。
院長の専門である黄斑疾患があると、③のレンズは近方視力が出にくい(近くが見えない)という問題が生じます。
②の保険のきく付加機能のあるレンズはこれらの問題に対して対策があるものです。
現在、参天製薬からLENTISというレンズ、AMOからEyhanceというレンズの2種類が発売されております。

LENTISについて


LENTISは簡単に言うと上半分が遠く用、下半分が近く用に分かれたレンズ(分節型眼内レンズ)です。
その継ぎ目が非常になめらかであり、先程書いたハロー・グレアは単焦点レンズと同等と言われています(あまり出ません)。
近くがどれぐらい見えるかというと、5mの遠方合わせの焦点から、だいたい66cmの距離までにピントが合います。

PC作業の距離(50cm)や、読書(33cm)にはピントが合わないので老眼鏡がほしい形にはなりますが、
ある程度手元まで見えるため老眼が若干改善するような印象になります。
もう一つ特徴として現在の他のすべてのレンズは黄色く着色されておりますが、LENTISだけクリアレンズ(透明のレンズ)になっています。
そのため、術後1−2ヶ月程度、ものが青っぽく見えることがあります。
一般的に黄色いレンズは20-30代の明るさになると言われており、LENTISは10代の明るさになると言われています。
当院では特に若い世代で白内障手術が必要な方に多く使用しております。

Eyhanceについて

これは中央部にわずかにカーブの異なる部分を配置(継ぎ目なく)することで、焦点の幅を広げたレンズ(焦点深度拡張型レンズ)になります。
単焦点眼内レンズに比べて、焦点の合う部分から少し遠く、少し近くの視力が向上しており、LENTISと同様に老眼が若干改善するようなレンズとなっております。
LENTISと比べて焦点の幅は少し狭いですが、黄色い着色レンズであるため青く見えるような自覚が出ないことと、黄斑疾患があっても③のレンズのように視力が出にくいことは無いと言われているレンズになります。

現在③のレンズは「選定療養」として保険診療の手術料金に加えて追加の眼内レンズ代を支払って扱う形になっております。
当院では黄斑疾患と③のレンズの相性が悪いため、選定療養の施設認定は取っておりません。
当院では通常の単焦点眼内レンズに加えて、普通の保険診療の費用の範囲内で使えるLENTISやEyhanceを選択することができます。
ご興味のある方がおられましたら、院長まで相談をお願いいたします。

さいごに

先日ブログで書きましたように、見えないことをそのままにしておくと健康寿命が短くなることが知られています。
白内障は全ての方が罹患するものであり、長生きをしていくとかならず手術適応の時期が訪れます。
よく聞かれることですが、白内障手術は人生に一度だけでよく、手術が終わると二度となるものではありません。
眼内レンズも少なくとも30年以上はもつと言われています。
もちろん白内障手術の必要がない方には手術をおすすめしません。
それぞれの方の然るべきタイミングがあり、その時にはよく考えて手術を受けて頂き、その先もまた元気で人生を過ごしていただきたいと考えております。
人生100年時代です。
患者さまたちが最後まで見える目を保ち、元気で過ごせるように、これからも頑張っていきたいと思います。